社長インタビュー

社長インタビュー 〜 鉄職人 熊谷鈴男に聞く 〜

熊谷鉄工所は、岩手県大船渡市で九代続く鍛冶屋でしたが父でもあり、会社の前社長でもある先代からは漁具製造の会社として設立しました。
約20年前からは漁具の技術を生かし、カギカマをはじめとする園芸用具の開発に力を入れ、製造・販売を行っております。

「漁具の焼入れは鍛冶屋職人だからこそ」

当社の漁具製品は、アワビをとるアワビ鉤(カギ)と牡蠣のナイフが主流です。丈夫さと切れ味にこだわっています。
その他、ワカメの茎からメカブだけを切り取れる「メカブカッター」は、刃物作りのノウハウを生かして開発した自慢のオリジナル製品です。
ありがたいことに、どの製品も沢山の漁業関係者から注文をいただいております。



アワビをとる鉤(かぎ)
ワカメの茎からメカブだけを切り取れるメカブカッター


「鍛冶屋の技術を漁具の改良に生かしているので丈夫で頑丈なんです」

牡蠣の殻は硬く、牡蠣もアワビは海底の岩にへばりついて岩からなかなか剥がれません。
カギの刃先が弱いと牡蠣やアワビは採れないのです。
また、アワビを採る際に直接引っ掛けるより、岩場に引っ掛けてしまうことが結構多いもの。カギが強靭な刃先でないとうまく採れません。
当社は鍛冶屋の技術を漁具の改良に生かし、刃の形から、持ち手の握りやすさ、丈夫さを追求してひとつひとつ作っておりますので、岩を相手に折れず、曲がらずの強靭の刃です。
これからもより丈夫で、使い勝手のいい道具を漁業関係者にお届けして漁業の手助けができれば、と。

「漁具需要の復活はまだ戻ってはいない」

近年では人材不足もあり漁業全体が縮小傾向ですし、漁獲量も減っています。
今後もどんどん先細りするのは目に見えております。

2011年、忘れもしない東日本大震災が起こりました。
大船渡市も壊滅的な被害を受けました。
漁業の復興を待つしかない中、漁具の売上げは一時期8割も減ってしまった時期もあります。
あの当時は不安しかありませんでしたが、会社をたたむことは一切考えておりませんでした。自分が出来ることはこれしかないですし。
復興に伴い徐々に注文も再び増えてはきていますが、やはり震災をきっかけに廃業した漁業者も多く、今現在でも震災以前の売上げには戻っていません。

「漁具の技術を除草器具に活かしたいと思った」

園芸器具は20年くらい前から開発をはじめました。
庭の草取り作業があまりに辛かったし、どの道具でも使いにくさを感じました。
自分だけではなく周りを見ても草取りに苦労していたし、ガーデニング、家庭菜園をやる人が多いので、だったら自分で使いやすい草取りガマを作ってみるのはどうかなと思いましてね。

草取りガマは石や硬い土が相手です。強靭な刃が求められる。
だからこそ硬さに負けない漁具の焼入れが適していると思いました。今までの漁具の技術を活かして草取りガマとして形になれば最高だと。

はじめに、近くに売ってある殆どの草とりカマを買ってきては片っ端から試しました。
そして試作品を作っては試し草取りをする、これを何度も繰り返しました。
たくさん周りの草を刈るので、近所ではすごく喜ばれましたよ(笑)

「カギカマの形を受け入れてもらうには時間がかかりました」

作り始めの頃は、他のカマと同じ平刃を作っていました。
しかし、これですと根が切れてまた生えてくる。いくら刈ってもまた草が簡単に生えてくるのでは楽にはならない。生えないよう草の根っこが残らないよう根こそぎ刈るにはどうすればいいのか。
最良の形状と角度、持ち手の幅など追求して試行錯誤を繰り返し、最終形にたどり着くまでに100回以上も試作を重ねました。
そして、改良点はもうない「究極完成版」草取りカギカマを完成させました。
縦に使えば力を入れなくとも細い刃板で土をどんどんかき起こし、横に使えばギザギザにひっかけて草を根こそぎとれる自慢のカギカマです。
自分で使ってみても感動しましてね、完成したときは「これだ!」という強い思いがありました。

しかし、今までとは違う珍しい形状のため「これでは草が取れない」と、試されることなく反対されたのです。
でも私は絶対の自信がありました。一度使えばわかってくれると。
それでも「キザ刃では取れない」と言われ、なかなか評価には繋がりませんでした。
「一度試せばわかるのに。今にわかってもらえる。」とじりじりと煮えきれない思いでいっぱいでした。


独特なギザ刃が特徴

ステンレス製も大人気となりました

「道の駅に置いてもらったのがきっかけに売れるように」

草取りカギカマは完成したものの、どこで売るかで悩んでいました。手にしてもらい、使ってもらわないことには良さも分かってもらえません。
道の駅ではどうか?とサンプルを送ったりしましたが、珍しい形状を見ては断られと、なかなかうまいようにはいきませんでしたね。

そんな時、ありがたいことに三陸町の道の駅から声をかけられました。
今まで否定的な意見が多かったので、本当に売れるのか?と不安はありました。

ところが、いざ販売してみるとあまりの売行きに担当者がびっくりするほどでした。
購入して使った方が「便利だよ」「面白いほど草が取れるよ」と草取りカギカマを認めて下さり、口コミでどんどん広げてくれたのです。
それをきっかけで他の道の駅からも注文が入り、取り扱ってもらえる店舗がどんどん増えました。
現在では全国の道の駅で取り扱ってもらえるようになり、年間3万本売れるまでに至りました。

草取りカギカマが完成・販売して数年経った頃、形がそっくりの中国製の類似品が出回り始めました。
「弊社のものが模範品なんかに負けるはずがない」と自信はありましたが、類似品なるものは錆びにくいステンレス製で作られ、安価で販売されていたため、顧客が流れ、売れなった時期もありましたね。
そのうちに「熊谷(鉄工所)の草取りカギカマでなくては取れない」といわれ、離れていた客も戻って来てくださり、徐々に売上も持ち直しました。

そのことでさらに自信がつきました。
これからも慢心せず、技術を緩めず、どんどん使い勝手のよい商品を生み出していきます。

「ガンガンとハードにつかってもらいたい」

弊社の製品は、岩が相手のアワビカギの焼入れで刃を作っておりますから過酷な場所を得意としています。
「大事に、丁寧に使わせていただきます」とお客様はおっしゃってくださいますが、私としてはガンガンとハードに使ってもらいたいです。
普通の草取りガマは刃こぼれしたり、曲がってしまうかもしれませんが、弊社の製品は石の上で叩いても刃こぼれしたり曲がったりすることはないです。
それで充分耐えられる焼入れをして強靭な刃で作っておりますから。切れ味も抜群です。
丈夫で長持ちすると売り上げは伸びないけれど、使って喜んでもらえることが一番ですから。

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